マスクを着用する生活が日常となり、「以前よりも口臭が気になるようになった」と感じる人が増えています。その原因の一つとして、意外と見過ごされがちなのが「口呼吸」です。マスクをしていると、無意識のうちに鼻呼吸ではなく口呼吸になっていることが多く、これが口臭を悪化させる大きな要因となるのです。なぜ、マスクをすると口呼吸になりやすいのでしょうか。マスクで鼻が覆われると、息苦しさを感じやすくなり、自然と口で呼吸しようとしてしまいます。また、マスク内の湿度が高くなることで、鼻粘膜が刺激され、鼻詰まりが起こりやすくなることも口呼吸を誘発します。では、口呼吸がなぜ口臭を悪化させるのでしょうか。最大の理由は「口腔内の乾燥」です。通常、鼻呼吸をしていれば、鼻毛や鼻の粘膜がフィルターの役割を果たし、吸い込んだ空気に適度な湿度と温度を与えてくれます。しかし、口呼吸では乾燥した空気が直接口の中に入り込むため、唾液が蒸発しやすくなり、口腔内が乾燥してしまいます。唾液には、食べ物のカスや細菌を洗い流す自浄作用、細菌の増殖を抑える抗菌作用、歯の再石灰化を促す作用など、口の中の健康を保つための重要な役割があります。唾液が減少し、口の中が乾燥すると、これらの機能が低下し、細菌が繁殖しやすい環境になります。口臭の原因となる揮発性硫黄化合物(VSC)は、これらの細菌がタンパク質などを分解する際に発生するため、細菌が増えれば増えるほど、口臭も強くなってしまうのです。さらに、口呼吸は舌の位置にも影響を与えます。正常な鼻呼吸の場合、舌は上顎に軽くついている状態ですが、口呼吸では舌が下がりやすく、気道を確保するために舌が後方に落ち込むこともあります。これにより、いびきをかきやすくなったり、睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まったりするだけでなく、舌苔が付着しやすくなることも口臭の原因となります。マスク生活で口臭が気になるようになったら、まずは自分が口呼吸になっていないか意識してみましょう。意識して鼻呼吸を心がける、唇を閉じるトレーニングをする、こまめに水分補給をする、部屋の湿度を保つなどの対策が有効です。また、鼻炎やアレルギーなどで鼻詰まりがある場合は、耳鼻咽喉科で治療を受けることも重要です。口呼吸の改善は、マスク時の口臭対策だけでなく、口腔全体の健康維持にも繋がります。
マスク生活と口呼吸口臭悪化の意外な関係