顎がしゃくれている状態、いわゆる下顎前突症や反対咬合を、見た目の問題としてだけ捉え、特に治療せずに放置している方もいるかもしれません。しかし、顎しゃくれを放置することには、審美的な問題以外にも様々なデメリットが潜んでいるのです。まず、最も大きなデメリットの一つが「噛み合わせの問題(不正咬合)」です。顎がしゃくれていると、多くの場合、下の前歯が上の前歯よりも前に出ている「受け口(反対咬合)」の状態になります。これにより、前歯で食べ物をうまく噛み切ることができなかったり、奥歯に過度な負担がかかったりします。しっかりと咀嚼できないことで、消化器官への負担が増加し、栄養の吸収効率が悪くなる可能性も考えられます。また、特定の歯にばかり負担がかかることで、その歯が早期に摩耗したり、割れたり、歯周病が進行しやすくなったりするリスクもあります。次に、「顎関節への負担」も懸念されます。正常な噛み合わせでない場合、下顎を不自然な位置で動かさなければならなくなり、顎関節に過度な負担がかかりやすくなります。これが長期間続くと、顎関節症(顎が痛い、口が開きにくい、カクカク音が鳴るなど)を引き起こす原因となることがあります。さらに、「発音への影響」も無視できません。特にサ行やタ行などの特定の音は、舌と歯の位置関係が重要になります。顎しゃくれや反対咬合の場合、舌の動きがスムーズに行えず、発音が不明瞭になったり、滑舌が悪くなったりすることがあります。また、「虫歯や歯周病のリスク増加」も考えられます。歯並びが悪い部分は、歯ブラシが届きにくく、プラーク(歯垢)が溜まりやすくなります。これにより、虫歯や歯周病にかかりやすくなり、進行も早まる可能性があります。そして、やはり「見た目のコンプレックス」は大きな問題です。顎がしゃくれていることで、自分の容姿に自信が持てず、人前に出るのが億劫になったり、コミュニケーションに消極的になったりする方も少なくありません。これは、精神的なストレスにも繋がりかねません。これらのように、顎しゃくれを放置することには多くのデメリットが伴います。もし、ご自身の顎の状態や噛み合わせに気になる点があれば、まずは歯科医師や矯正歯科医に相談し、適切なアドバイスを受けることが大切です。状態によっては、矯正治療や外科手術など、改善のための治療法があります。
顎しゃくれを放置するデメリットとは?