ドライソケットは、抜歯後の治癒過程で起こりうる厄介な合併症です。多くの患者さんが不安に思うのは、その初期症状、特に見た目でわかるサインではないでしょうか。実際の症例を参考に、ドライソケットが疑われる際の見た目の警告サインについて解説します。例えば、ある患者さんは親知らず抜歯後、3日目からズキズキとした強い痛みが出現しました。鏡で確認すると、抜歯した穴は黒っぽく見え、血餅(血の塊)が存在しているようには見えませんでした。むしろ、穴の底に白っぽい硬い組織が露出しており、これが骨である可能性が考えられました。周囲の歯茎も赤く腫れあがり、触れると強い圧痛がありました。このような「抜歯窩に血餅がない」「骨が露出しているように見える」「周囲の歯茎の強い炎症」は、ドライソケットの典型的な見た目の特徴です。別の症例では、抜歯後数日経過しても穴が塞がる気配がなく、むしろ穴が広がっているように見えたと訴える患者さんもいます。この場合も、血餅が早期に脱落、あるいは溶解してしまった結果、治癒が遅れているサインと捉えられます。さらに、抜歯窩から嫌な臭いがする場合も注意が必要です。これは、露出した骨や組織に細菌が感染し、炎症を起こしている可能性を示唆します。見た目では直接確認しにくいかもしれませんが、口臭の変化も一つの指標となり得ます。重要なのは、これらの見た目のサインは、多くの場合、抜歯後2日から5日程度経過してから顕著になるという点です。抜歯直後は麻酔の影響や通常の腫れで判断しにくいこともありますが、数日経っても改善しない、あるいは悪化する見た目の変化には特に注意を払う必要があります。これらの警告サインに気づいたら、決して自己判断で放置せず、速やかに抜歯を行った歯科医院を受診してください。早期の適切な処置が、痛みの軽減と治癒の促進に繋がります。
ドライソケット症例から学ぶ見た目の警告サイン