しゃくれ(下顎前突)の見た目を気にされている方の中には、無意識のうちに症状を悪化させるような行動をとってしまっているケースがあります。根本的に自力で治すことは難しいですが、少なくともこれ以上悪化させないために、日常生活で注意できる点がいくつかあります。これらの点に気をつけることは、将来的に専門的な治療を受ける際にも、より良い結果を得るための一助となるかもしれません。まず、最も避けたいのが、自己流で無理な力を顎に加えることです。インターネットなどで見かける「しゃくれを治すマッサージ」や「顎を押さえつける器具」などを安易に試すのは非常に危険です。骨格性のしゃくれの場合、顎の骨の形や位置は簡単には変わりません。無理な力を加え続けると、顎関節に過度な負担がかかり、顎関節症(顎の痛み、開口障害、クリック音など)を引き起こしたり、既存の症状を悪化させたりする可能性があります。また、歯並びにも悪影響を及ぼすことも考えられます。次に、日常的な癖に注意しましょう。例えば、無意識のうちに下顎を前に突き出す癖、舌で下の前歯を押し出す癖(舌突出癖)、頬杖をつく癖、うつ伏せで寝る癖などは、長期間続くと顎の成長や歯並びに影響を与える可能性があります。特に成長期のお子さんの場合は、これらの癖がしゃくれを助長する一因となることがあるため、保護者の方が気をつけて見てあげることが大切です。成人であっても、これらの癖は顎関節への負担を増やす可能性があるため、意識して改善するよう努めましょう。口呼吸の習慣も、しゃくれの要因の一つと考えられています。口で呼吸することが常態化すると、舌の位置が下がりやすく、下顎が前方に誘導されたり、上顎の成長が抑制されたりする可能性があります。鼻呼吸を意識し、もし鼻炎などで鼻の通りが悪い場合は、耳鼻咽喉科を受診して適切な治療を受けることも検討しましょう。食事の際の噛み方も影響することがあります。片側だけで噛む癖(偏咀嚼)は、左右の顎の筋肉のバランスを崩したり、顎関節に偏った負担をかけたりする可能性があります。食事の際は、左右均等に、そしてよく噛んで食べることを意識しましょう。硬すぎるものを無理に噛むのも避けた方が良いでしょう。