お子さんがしゃくれの傾向にある場合、成長期に行う「小児矯正(一期治療)」は、将来的な本格矯正の負担を軽減し、場合によっては外科手術を回避できる可能性を秘めた非常に重要な治療です。大人の矯正とは異なり、成長期の子供の顎の骨はまだ柔らかく、成長をコントロールする治療が可能だからです。しゃくれの原因が下顎の過剰な成長にある場合、小児矯正では、その成長を抑制する装置を使用することがあります。例えば、「ヘッドギア」と呼ばれる装置は、口外に装着することで下顎の成長を抑制し、上顎とのバランスを整える効果が期待できます。また、上顎の成長が不十分で相対的にしゃくれに見える場合は、「上顎前方牽引装置」などを用いて上顎の成長を促す治療を行います。これは、上顎を前に引っ張り出すことで、上顎と下顎の前後的なバランスを改善する目的があります。さらに、「機能的矯正装置」と呼ばれる様々な装置も活用されます。これは、筋肉の動きを利用して顎の成長をコントロールするもので、例えば「チンキャップ」は、下顎の成長方向を誘導する効果が期待できます。これらの装置は、主に夜間や自宅で装着するものが多く、お子さん自身や保護者の協力が不可欠となります。小児矯正の最大のメリットは、顎の骨格の不調和を早期に改善することで、永久歯が生え揃った後の本格矯正(二期治療)がよりスムーズに進む点です。場合によっては、二期治療が不要になることもあります。また、骨格のバランスが整うことで、見た目の改善はもちろん、噛み合わせの改善、発音のしやすさ、口呼吸の改善など、様々な機能的なメリットも期待できます。小児矯正の開始時期は、お子さんの成長段階やしゃくれのタイプによって異なりますが、一般的には6歳から10歳頃が目安とされています。お子さんのしゃくれが気になる場合は、まずは早期に矯正歯科医に相談し、適切な診断と治療計画を立てることが、お子さんの健やかな成長と美しい笑顔のために最も大切です。