食事の際や会話中にふと気づく、ベロの下の鋭い痛み。鏡で確認すると、そこに白い口内炎が…という経験は、多くの方が一度はしたことがあるのではないでしょうか。ベロの下、専門的には舌下部(ぜっかぶ)や口腔底(こうくうてい)と呼ばれるこの場所にできる口内炎は、特に厄介な存在です。なぜ、こんなデリケートな場所に口内炎ができてしまうのでしょうか。その主な原因を探ってみましょう。最も一般的な原因の一つは、物理的な刺激です。硬い食べ物を食べた際に誤って傷つけてしまったり、歯ブラシが強く当たってしまったり、あるいは歯並びや不適合な入れ歯、矯正装置などが常に舌の下の粘膜に接触し、慢性的な刺激を与えている場合などです。舌の下の粘膜は非常に薄くデリケートなため、わずかな刺激でも傷つきやすく、そこから炎症が起きて口内炎に発展しやすいのです。次に考えられるのは、ストレスや疲労の蓄積です。これらは体の免疫力を低下させ、口内炎ができやすい状態を作り出します。仕事や学業のプレッシャー、睡眠不足などが続くと、舌の下にも口内炎が現れやすくなります。栄養バランスの乱れも大きな要因です。特に、ビタミンB群(B2、B6、B12など)やビタミンC、鉄分、亜鉛などが不足すると、皮膚や粘膜の健康が損なわれ、口内炎のリスクが高まります。偏った食事やダイエットなどが原因となることもあります。口腔内の不衛生も無視できません。食べ物のカスが残っていたり、歯磨きが不十分だったりすると、口の中で細菌が繁殖しやすくなり、小さな傷からでも炎症が起こり、口内炎へと進行してしまいます。また、唾液の減少も関係しています。唾液には自浄作用や粘膜保護作用がありますが、ストレスや薬の副作用などで唾液が減ると、口の中が乾燥し、粘膜が傷つきやすくなるとともに、細菌も繁殖しやすくなります。稀なケースではありますが、ウイルス感染(ヘルペス性口内炎など)や特定の全身疾患(ベーチェット病など)、アレルギー反応、薬剤の副作用などが原因で舌の下に口内炎ができることもあります。これらのように、ベロの下の口内炎の原因は多岐にわたります。繰り返しできる場合や、なかなか治らない場合は、自己判断せずに歯科口腔外科や耳鼻咽喉科を受診することが大切です。