顎の痛み、口が開きにくい、カクカク音が鳴る…。これらの症状は「顎関節症(がくかんせつしょう)」の代表的なサインです。顎関節症は、日常生活に支ოფをきたすこともある厄介な病気ですが、その治療法の一つとして「マウスピース(スプリントとも呼ばれます)」が用いられることがあります。では、顎関節症治療におけるマウスピースは、どのような効果と役割を担っているのでしょうか。まず、マウスピースの最も大きな役割は「顎関節や筋肉への負担軽減」です。顎関節症の主な原因の一つに、歯ぎしりや食いしばり、偏った噛み癖などによる顎関節や咀嚼筋(そしゃくきん:噛むための筋肉)への過度な負荷が挙げられます。マウスピースを装着することで、上下の歯が直接強く接触するのを防ぎ、噛みしめる力を分散させることができます。特に、就寝中に無意識に行っている歯ぎしりや食いしばりは、非常に強い力で長時間にわたって顎関節や筋肉に負担をかけています。夜間にマウスピースを装着することで、これらの有害な力から顎関節と筋肉を保護し、炎症や痛みを和らげる効果が期待できます。次に、「噛み合わせの安定化」もマウスピースの重要な役割です。マウスピースは、個々の患者さんの噛み合わせに合わせて精密に作製され、装着することで上下の歯が均等に接触し、顎関節が安定した位置に誘導されるように設計されています。これにより、特定の歯だけに過度な力がかかったり、顎が不自然な位置で動いたりするのを防ぎ、顎関節の負担を軽減します。また、マウスピースを装着することで、「筋肉のリラックス効果」も期待できます。歯ぎしりや食いしばりによって緊張し続けていた咀嚼筋が、マウスピースによって適度な安静状態に保たれることで、筋肉の緊張が和らぎ、こわばりや痛みが軽減されることがあります。さらに、マウスピースは「顎関節の円板(関節円板)の位置異常の改善」にも寄与する場合があります。顎関節の中には、クッションのような役割を果たす関節円板という軟骨組織がありますが、これがズレてしまうことが顎関節症の症状(クリック音や開口障害など)の原因となることがあります。
顎関節症とマウスピースその効果と役割とは