奥歯の歯茎に痛みを感じても、「そのうち治るだろう」「忙しいから後でいいや」と放置してしまうと、後々深刻な事態を招く可能性があります。奥歯の歯茎の痛みを放置することには、どのようなリスクがあり、どのようなサインが現れたら特に注意が必要なのでしょうか。まず、痛みの原因が歯周病であった場合、放置すれば当然ながら歯周病は進行します。歯周病は、歯を支える骨(歯槽骨)を徐々に溶かしていく病気です。初期には自覚症状が少ないため放置されがちですが、進行すると歯がグラグラになり、最終的には自然に抜け落ちてしまうこともあります。奥歯は噛む力が強くかかるため、歯周病の影響を受けやすく、一度失ってしまうと食事の際の咀嚼効率が著しく低下します。次に、親知らずが原因で炎症(智歯周囲炎)を起こしている場合、放置すると炎症が周囲の組織に広がり、重症化するリスクがあります。顔が大きく腫れたり、口が開きにくくなったり、高熱が出たりすることもあります。最悪の場合、炎症が喉の奥や頸部にまで及び、気道を圧迫して呼吸困難を引き起こす「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」という命に関わる状態に進行する可能性もゼロではありません。また、歯の根の先に膿が溜まる根尖性歯周炎が原因である場合、放置すると膿の袋が大きくなり、周囲の骨を溶かしたり、歯茎に穴が開いて膿が出てきたり(瘻孔:ろうこう)、顔の皮膚から膿が出てくることもあります。この膿の袋が上顎の奥歯の根の先にある場合、副鼻腔(上顎洞)に炎症が波及し、副鼻腔炎(蓄膿症)を引き起こすこともあります。では、どのようなサインが現れたら、特に注意が必要なのでしょうか。