しゃくれ(下顎前突)の見た目に悩む方の中には、姿勢の悪さが関係しているのではないかと考える方もいらっしゃるかもしれません。確かに、長時間の猫背や、頭部が前方に突き出るような姿勢(ストレートネックなど)は、首や肩の筋肉に負担をかけるだけでなく、顎の位置にも微妙な影響を与える可能性があります。しかし、姿勢を良くすることで骨格性のしゃくれが治るかというと、それは難しいと言わざるを得ません。ただし、姿勢を改善することは、全体的な体のバランスを整え、見た目の印象を良くしたり、しゃくれがこれ以上悪化するのを防ぐ一助となったりする可能性はあります。猫背の姿勢が続くと、頭が体の軸よりも前に出てしまい、バランスを取るために首の筋肉が常に緊張した状態になります。この時、下顎はわずかに後方に引かれるか、あるいは逆にバランスを取るために無意識に前方に突き出されるような力がかかることも考えられます。また、口呼吸を誘発しやすくなり、舌の位置が低くなることで、下顎の成長方向や位置関係に間接的な影響を与える可能性も指摘されています。特に成長期のお子さんの場合、悪い姿勢が長期間続くことは、顎顔面の健やかな発育にとって好ましくないと考えられます。自力で姿勢を改善するためには、まず日常生活での意識が重要です。座っている時も立っている時も、背筋を伸ばし、肩の力を抜いて、頭が体の真上にくるようなイメージを持つように心がけましょう。デスクワークが多い方は、椅子の高さやモニターの位置を調整し、正しい姿勢を保ちやすい環境を作ることも大切です。また、定期的にストレッチや軽い運動を取り入れ、首や肩、背中の筋肉の緊張を和らげ、柔軟性を高めることも有効です。例えば、肩甲骨を寄せる運動や、胸を開くストレッチ、体幹を鍛えるエクササイズなどが挙げられます。正しい姿勢を意識することで、首や肩こりの軽減、呼吸の改善、そして見た目の印象アップといった効果が期待できます。顔つきも、背筋が伸びることで顎が自然な位置に収まりやすくなり、多少スッキリと見えることがあるかもしれません。しかし、これはあくまで「見た目の印象」の変化であり、下顎骨そのものの形や位置が変わるわけではありません。骨格的なしゃくれの根本的な改善には、やはり歯列矯正や外科的矯正手術といった専門的な治療が必要です。
しゃくれと姿勢の関係自力で改善できる?