「親が顎がしゃくれているから、自分もそうなるのでは…」「子供に遺伝したらどうしよう…」顎しゃくれに関して、遺伝の影響を心配される方は少なくありません。実際に、顎の骨格の形態や成長パターンは、遺伝的な要因を強く受けると考えられています。両親や祖父母、兄弟姉妹に顎しゃくれの傾向がある場合、その子供や孫にも同様の特徴が現れる可能性は、他の人に比べて高くなると言えるでしょう。しかし、遺伝が全てを決めるわけではありません。顎しゃくれの発現には、遺伝的要因に加えて、環境的要因も複雑に関与していると考えられています。環境的要因とは、例えば、幼少期の口腔習癖(指しゃぶり、舌突出癖、口呼吸など)、食生活、姿勢、アデノイドや扁桃腺の肥大による鼻呼吸の障害などが挙げられます。これらの環境的要因が、遺伝的な素因を持つ人の顎の成長に影響を与え、顎しゃくれを助長したり、逆に抑制したりする可能性があるのです。したがって、「遺伝する確率は何パーセント」と一概に言うことは非常に難しいのが現状です。遺伝的な傾向があったとしても、必ずしも顎しゃくれになるわけではありませんし、逆に遺伝的な素因がなくても、環境的な要因によって顎しゃくれの症状が現れることもあります。では、遺伝的な傾向が心配な場合、何か対策はあるのでしょうか。まず、お子さんの場合は、早期からの定期的な歯科検診が非常に重要です。歯科医師や矯正歯科医は、お子さんの顎の成長発育の状態を継続的に観察し、顎しゃくれの兆候が見られた場合に、適切なタイミングで介入することができます。例えば、口腔習癖があればその改善指導を行ったり、必要に応じて顎の成長をコントロールするような早期矯正治療(咬合誘導)を提案したりします。早期に適切な対応をすることで、遺伝的な要因があったとしても、その影響を最小限に抑え、より良い顎の成長を促すことができる可能性があります。また、成人の方で、ご自身の顎しゃくれが遺伝ではないかと心配されている場合も、まずは専門医に相談することが大切です。正確な診断を受け、現在の状態や考えられる原因、そしてもし治療を希望するのであれば、どのような治療法があるのかについて、詳しい説明を聞くことができます。遺伝は一つの要因ではありますが、それが全てではありません。
顎しゃくれは遺伝する?気になる確率と対策