あれは忘れもしない、大事なプレゼンテーションを数日後に控えたある日のことでした。朝、食事をしようとした瞬間、舌の下にズキンとした鋭い痛みが走ったのです。恐る恐る鏡で見てみると、米粒ほどの大きさの、白い縁取りのある赤い口内炎ができていました。場所が場所だけに、話すたびに擦れて痛く、食事もままなりません。市販の塗り薬を試しましたが、舌の下は唾液が多くてすぐに薬が流れてしまうのか、あまり効果を感じられませんでした。プレゼンの練習をしようにも、痛くて呂律が回らない始末。ストレスもピークに達していたのでしょう、口内炎は治るどころか、少し大きくなっているようにさえ感じました。なんとかプレゼンは乗り切ったものの、その後も口内炎はしぶとく居座り続けました。痛みを我慢しながらの食事、会話も億劫になり、気分も塞ぎがちになりました。普段なら1週間もすれば治る口内炎が、今回は2週間近く経っても改善の兆しが見えません。「これは何かおかしいのかもしれない」と不安になり、ついに歯科口腔外科の門を叩きました。先生に診ていただくと、「典型的なアフタ性口内炎ですね。場所が悪くて治りにくいのかもしれません。お仕事も忙しかったようですし、疲れも溜まっているのでしょう」とのこと。特別な病気ではないと分かり、まずは一安心しました。処方されたのは、ステロイド系の軟膏と、粘膜を保護するうがい薬でした。そして、何よりも「しっかり休んで、栄養のあるものを食べてください」と念を押されました。薬を使い始め、意識して休息を取るようにしたところ、あれほど頑固だった口内炎が、数日後には徐々に小さくなり始め、痛みも和らいでいきました。完全に治るまでにはさらに1週間ほどかかりましたが、あの時の解放感は今でも忘れられません。この経験から学んだのは、口内炎を甘く見てはいけないということ、そして、体の不調は早めに専門医に相談することの大切さです。特にベロの下のようなデリケートな場所の口内炎は、治りにくいこともあるので、我慢せずに適切なケアを受けることが重要だと痛感しました。